『アスリートの魂』と『フィギュアスケートTV』

3月11日の早朝と深夜にNHKのBS1で『アスリートの魂』、BSフジテレビで『フィギュアスケートTV』が放送された。

『アスリートの魂』は、初っ端から恋ダンスの遊んでる映像に真面目なナレーションを付けていて「NHKはふざけてるのか?」と思ってしまった。恋ダンスを楽しんで踊ってる様子は見ていて楽しかったが、全編ナレーションと映像とのズレを感じてしまった。ストーリーが先にあって、それっぽい映像を探して編集しました感。

全体的に知っている情報しか無かったので、今年の総集編(大一番の世界選手権はまだだけど)&「見たことない映像がいくつかは入っていたなぁ」と言う番組だった。

『フィギュアスケートTV』のノーカットインタビューは面白かったので、気になった部分を書き起こす。

   世界選手権に向けて「打つ手」は?

(中略)自分の演技=ノーミス。しかも「ただノーミス」じゃなくて、「完成された質のノーミス」が自分の演技。それをやったら誰も敵わないと自負してますし、その「自信」を「過信」にならないように、更に突き詰めて練習して行かないとな、と思いました。

   ジャンプ構成は(失敗した時用の物を)準備していくのか?

(中略)サルコー飛べればそんな事は絶対起きない。自分の4回転トウループの質よりも、3回転アクセルの質の方が良い。4回転トウループで冒険するよりも、3回転アクセルの質を更に上げて、後半2本(の3Aコンビネーション)を入れる方が一番だと思っている。

   どんな世界選手権にしたいか?

(中略)練習方法を今回、掴みかけた物もある。試合期間に色んな選手の練習方法を見る事が出来たり、跳び方だったり色々刺激を受けた。

この銀メダルは、非常に多くの事を得られた銀メダルだった。”

『アスリートの魂』で本田武史さんが「どんな時でも跳べる自信が無いとプログラムに入れることは出来ない」と言っていた。「出来ないかもと少しでも不安な感情があると成功しない」って事かもしれない。

失敗した時用のジャンプ構成を予め準備しておけば、素人考えだと「保険」が効いて良さそうだが、それを考えてる時点で気持ちで負けていてアウトなのかもしれない。

  • 3A+3Tの基礎点:8.5+4.3=12.8×1.1(後半)=14.08
  • 3A+1Lo+3Sの基礎点:8.5+0.5+4.4=13.4×1.1(後半)=14.74

このコンビネーションが例えGOEが0であっても、4回転ジャンプより基礎点は上回っている。(4回転ルッツ:13.6、4回転フリップ:12.3、4回転ループ:12.0)

過去のスコアを見てもGOEは1以上付く実績があるので、過信ではない自信に繋がっているのだろう。

4回転ループも4CC(4大陸選手権)で加点が付き、実績が出来たので自信になるだろう。

残すは「後半4回転サルコー自信を持つ練習」だけかもしれない。

4CCでは世界選手権で上位に来るであろう選手が揃った。上位選手、特に多種クワド(4回転)持ちの選手の練習・ジャンプを見れたことは、分析派の羽生選手には収穫だったのだろう。

ちなみにこのインタビュー収録日は、

公式練習→試合→表彰式→メダリスト公式会見→日本記者囲み会見(新聞雑誌用と映像用の2回)→中村アナのインタ→カトパンのインタ→フィギュアスケートTVインタ→エキシビジョン、とハードな一日だったようだ。

フジテレビだけで3回もインタビューがあって、

  • カトパンには、一般の知識無い人向けゆっくりニコニコ
  • 中村アナには、ちょっと知ってる人向けリカバリー技術解説
  • ディレクターには、知ってる人向けアスリートです早口オラオラ

だったのが面白かった。

ビックマウスなスポーツ選手を、羽生選手を応援する以前は苦手だった。

「なぜわざわざ退路を断つの?」

最近は羽生選手を知って

「未来の自分に向けて言っているんだなぁ。一般の人にどう思われても、結果を出すことに集中しているのだろう。」

と思って見るようになった。

3Fの進化からPCSを知る

4CC(四大陸選手権)で追加した「3F後のターン」では、GOEは変わらなかったので、演技構成点(PCS=Program Component Score)の方で評価されたかを見てみる。

国際スケート連盟コミュニケーション第 2014 号 より抜粋

第504条 第3項a) 演技構成点(プログラム・コンポーネンツ)の定義

  • スケーティング・スキル

深いエッジ,ステップおよびターンの利用 、バランス,リズミカルな膝の動き,足運びの正確さ、流れと滑り、パワー,スピード,加減速の多様な利用、あらゆる方向へのスケーティングの利用 、片足でのスケーティングの利用


  • トランジション

ある要素から別の要素への動作の連続性、 多様さ、難しさ、質


  • パフォーマンス

    体の動き,感情の表現,知性の表出および投射、身のこなしと動作の明確さ、動作とエネルギーの多様さとめりはり、個性/人柄


  • コンポジション(構成)

    目的(アイデア,コンセプト,ビジョン,雰囲気)、パターン/氷面の十分な利用、 空間の多次元的な利用と動作のデザイン 、フレージングと形式(動作および部分が音楽のフレーズに合っていること)、構成の独創性 音楽の解釈(インタープリテーション)/タイミング


  • 音楽の解釈

    音楽(タイミング)にあった動作とステップ 、音楽の特徴/感情の表現,およびはっきりと識別できるときにはリズムの表現 、音楽の細部とニュアンスを反映するフィネス*の利用

* フィネスとは,スケーターによる音楽の細部とニュアンスの動作を通じた技巧的かつ洗練された取り扱いのことであ る.これはスケーターに固有のものであり,音楽および構成に対する内部の感情を示している.ニュアンスとは,作曲 者や奏者が音楽の音の強さやテンポや強弱に繊細な変化をもたらすための個性的な手法である


3Fのターンの追加によってトランジション、パフォーマンス、コンポジション、音楽の解釈の4項目は評価が上がっていたら良いなぁと思うが、PCSは演技全体について見ているので「ターンの効果」だけを抽出できない。

それを踏まえつつ、GPF(グランプリファイナル)→ 4CC(四大陸選手権)を比較してみる。

  • スケーティング・スキル 9.36 → 9.46(0.10UP)
  • トランジション     9.11 → 9.25(0.14UP)
  • パフォーマンス     9.07 → 9.54(0.47UP)
  • コンポジション(構成) 9.32 → 9.46(0.14UP)
  • 音楽の解釈       9.32 → 9.46(0.14UP)

全体的に上がっていたが、パフォーマンスの上がり方が特に大きい。

シーズン終盤なので、試合回数と練習量が蓄積されてきた。順調な上がり方でスコアを見るのが楽しい。

3Fの進化からジャンプGOEを知る

ジャンプの評価点(GOE=Grade of Execution)は-3~+3の7段階。

羽生選手の今季フリープログラム「Hope&Legacy」で、後半に入る前に3F(3回転フリップ)を1本跳んでいる。

GPF(グランプリファイナル)と比較すると、4CC(四大陸選手権)ではジャンプ後に両手を挙げるターンを追加していた。

ジャンプがどのように評価されるのか『国際スケート連盟コミュニケーション第 2000 号 (2016 年 7 月 14 日修正版) 』より抜粋

①ジャンプの+GOE 採点ガイドライン(プラス面)

  1.  予想外の / 独創的な / 難しい入り
  2.  明確ではっきりとした(SP におけるステップ/動作から直ちに行うジャンプでは難しい) ステップ/フリー・スケーティング動作から直ちにジャンプに入る
  3.  空中での姿勢変形 / ディレイド回転のジャンプ
  4.  高さおよび距離が十分
  5.  (四肢を)十分に伸ばした着氷姿勢 / 独創的な出方
  6.  入りから出までの流れが十分(ジャンプ・コンビネーション/シークェンスを含む)
  7.  開始から終了まで無駄な力が全く無い
  8.  音楽構造に要素が合っている

+ 1 : 2 項目、 + 2 : 4 項目、+ 3 : 6 項目またはそれ以上

「 最終の GOE を計算するためには,まず始めに要素のプラス面を考慮し,これが GOE 評価の起点となる.次に,ジャッジはあり 得るエラーのガイドラインに従って GOE を引き下げ,その結果が最終の GOE となる.」

とあるので、まずプラス面を拾う。

②エラーに対する引き下げ

  1. ダウングレード判定 (Downgraded)(記号 << ) -2 to -3
  2. SP: 1 つのジャンプのみからなるジャンプ・コンビネ ーションの最終の GOE は必ず -3
  3. SP: ジャンプの前に要求されているステップ/動作が 無い -3
  4. SP: ステップ/動作から直ちにジャンプしない,ジャ ンプ前のステップ/動作が 1 つのみ -1 to -2
  5. 回転不足判定 (Under-rotated)(記号 < ) -1 to -2
  6. 回転が足りない (記号無し) (ジャンプ・コンビネーションにおけるハーフ・ ループの回転が足りない場合を含む) -1
  7. 転倒 -3
  8. スピード,高さ,距離,空中姿勢が拙劣 -1 to -2
  9. 1ジャンプの着氷が両足 -3
  10. 1 ジャンプで両手がタッチ・ダウン -2
  11. 1 ジャンプの着氷でのステップ・アウト -2 to -3
  12. 片手またはフリー・フットがタッチ・ダウン -1
  13. ジャンプの間に 2 つのスリー・ターン(ジャンプ・ コンビネーション) -2
  14. ジャンプ間で流れが無い/方向を失う/リズムが 無くなる(コンビネーション/シークェンス) -1 to -2
  15. 拙い着氷 (悪い姿勢/間違ったエッジ/引っかき 等) -1 to -2
  16. 拙劣な踏み切り -1 to -2
  17. 長い構え -1 to -2
  18. F/Lz での重度の踏み切りエッジ違反 (記号 “e”) -2 to -3
  19. F/Lz での不明確な踏み切りエッジ (記号 “ ! ”) -1 to -2
  20. F/Lz での不明確な踏み切りエッジ (記号無し) -1

①-②が最終GOEになる。

で、実際のGOEを見てみるとGPFも4CCもGOEは1.6だった。

終わりにターン付けても評価は上がらなかった。残念。

各ジャッジの採点は両試合とも+3が3人、+2が5人、+1が1人。

+2は

  • プラス面が4項目
  • プラス面が6項目で(-1の)マイナス面が1項目

のどちらかだと推測。

+3の評価をもらうのは難しい。

【GOEの点数の計算方法】

3Fの価値尺度は+3=2.1点、+2=1.4点、+1=0.7点。

最大最小を切り捨てて(+3の1人と+1の1人)、尺度点の平均を求める。

2.1点×2人+1.4点×5人=4.2点+7点=11.2点÷7人(ジャッジ9人-切り捨て2人)=1.6点